アメリカ人事|EEOCはなぜ訴えられたのか?

               トランスジェンダー労働者の差別申立てを「取り合わない方針」が波紋

米国における雇用差別の監督官庁「EEOC(雇用機会均等委員会)」が、トランスジェンダー労働者の保護を拒否したとして提訴された。この問題は、米国における性の定義と雇用の公平性をめぐる、極めて重要なテーマである。本来、差別された時のかけこみ寺であるEEOCが訴えられた理由とは?

               🔎 背景と経緯

EEOCとは?

EEOC(Equal Employment Opportunity Commission)は、1964年公民権法第7編(Title VII)をはじめとした差別禁止法を執行する連邦機関です。差別を受けた労働者はまずEEOCに「チャージ(申立て)」を行い、EEOCが調査や訴訟を通じて救済を図る。

問題の発端

2025年、暫定委員長に就任したアンドレア・ルーカス氏は、トランプ政権の方針を色濃く反映した「性別=男女のみに限定する」立場を強調し、次のような行動を取った。

  • トランスジェンダー労働者による差別申立ての受理拒否
  • 州や地方政府との共同調査からの撤退
  • トランスジェンダー差別をめぐる係争中の訴訟の取り下げ

               ⚠️ 問題点

この対応に対し、LGBTQ+支援団体FreeState Justiceが提訴。提訴内容は以下の通り:

法的違反 内容
Title VII違反 性自認による差別も禁止対象とした最高裁判決(2020年Bostock事件)に反する
憲法修正第5条違反 平等保護の保障に反する
行政手続法(APA)違反 正当な手続きを経ないで方針転換を行った

               🔮 今後の影響

  • 訴訟の結果次第では、EEOCの方針が修正される可能性
  • 特に2020年の最高裁判決 Bostock v. Clayton County により、性自認による差別もTitle VIIの対象とされた点が鍵。
  • また、政権によってEEOCの構成が大きく変わるため、今回の訴訟は政治的対立の象徴ともいえるだろう。

               📝 まとめ

  • EEOCは本来、すべての労働者の差別からの保護を担う機関
  • しかし現体制下では、「性自認」に関する保護を限定しようとする動きが強まっている。
  • この方針に対し、法的・倫理的な問題が指摘されており、訴訟の行方が注目されている。

▼出所:

https://www.hrdive.com/news/eeoc-sued-transgender-bias-charges-freestate-justice/756316/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202025-07-31%20HR%20Dive%20%5Bissue:75455%5D&utm_term=HR%20Dive