アメリカ人事 | カリフォルニア 訴訟をめぐる弁護士費用の論争

アメリカ人事 | カリフォルニア 訴訟をめぐる弁護士費用の論争

ロサンゼルスの裁判所では、弁護士費用の授与に関して論争が生じており、これは三部作のような話である。

第1部:Pollock v. Kelso, 107 Cal. App. 5th 1190 (2025)

Pollock は性的嫌がらせおよび人種差別で訴訟を提起。第一審は被告の申立てにより訴えを退け、控訴裁判所も支持。しかしカリフォルニア州最高裁がこれを破棄し、差し戻し後、控訴裁判所は控訴費用を Pollock に認めた。Pollock は弁護士費用として526,475.63ドルを請求し、裁判所は493,577.10ドルを認めた。被告は控訴。サマリージャッジメント(略式判決)は覆され、裁判が予定されたが、当事者は弁護士費用の控訴以外で和解し、裁判所に「本訴訟はすべての当事者およびすべての訴因について取り下げられた」とする合意書を提出。

カリフォルニアの公正雇用住宅法(FEHA)に基づき弁護士費用を得るには、原告が「勝訴当事者(prevailing party)」であることが必要。裁判所は原審が Pollock を勝訴当事者と認定したのは誤りであったと仮定したが、Pollock は機密和解契約を裁判官に非公開で提出する用意があると申し出た。これに対し Kelso は記録の不適切な補足だと主張。しかし裁判所は、勝訴当事者かどうかの判断にはあらゆる情報が使用可能であり、Pollock が和解契約の提示に前向きで、Kelso がこれに反対したこと自体が、Pollock が何らかの実質的利益を得たと示すものだとした。

弁護士の時給850ドルは妥当であり、1.8倍の乗数(Multiplier)も合理的と判断。被告側の弁護士の作業時間が記録されていなかったため、時間の過剰さに関する裁判所の指摘は無視された。


第2部:Chavez v. California Collision, 107 Cal. App. 5th 298 (2024)

自動車修理工場の従業員3名が雇用に関する複数の請求を起こす。2名はカリフォルニア民事訴訟法998条に基づく和解案を受け入れた。3人目は11の訴因のうち2つについて陪審から21,061ドルの損害賠償を得たが、これは2回提示された998条の和解案よりも低額だった。被告は998条に基づき59,473.69ドルの費用請求を行った。原告はこれを労働法1194条および218.5条により無効だと主張し、逆に596,467.50ドルの弁護士費用を請求した。裁判所は被告の費用請求を認め、陪審の賠償額と相殺して、原告が得られる金額はゼロ、かつ原告が被告に33,152ドルを支払うとした。

控訴裁判所は、998条に基づく費用授与は労働法の一方的な費用移転規定により無効であると判断。これは、和解案よりも判決額が低い場合に費用を課す998条の規定より、未払い賃金の原告を保護する労働法の方が優先されるとした。

弁護士費用の請求について、裁判所は以下を検討:

  • 原告側は時間単価と作業時間、乗数が適用されなかったことに異議を唱えた。
  • 裁判所は、原告3名のうち誰のために使われた時間かを区別するよう求め、原告弁護士がこれに従ったため、一部の時間に対してのみ費用が認められた。結果として、裁判まで行った原告への弁護士費用はたったの260ドル。
  • 請求された時給400ドルに対し、裁判所は裁判での能力を根拠に200ドルが妥当とした。乗数は適用されなかった。

原告が弁護士費用に関する審問の記録を提供しなかったことが、裁判所の裁量逸脱の主張を弱めた。裁判所は「市場価格」についてどちらの弁護士の主張も採用する義務はなく、裁判官が専門的サービスの価値を判断する最適な立場にあるとした。争点が関連・結合していても、費用を配分できることも確認された。結果として、控訴裁判所は260ドルの弁護士費用を是認した。


第3部:Villalva v. Bombardier Transit Corp., 108 Cal. App. 5th 211 (2025)

2名の従業員が未払い賃金を請求し、まず「バーマン聴聞会」で敗訴。その後、州の上級裁判所に訴訟を提起し、14万ドルの未払い賃金と制裁金、20万ドルの弁護士費用と費用を得た。被告が弁護士費用の授与を不服として控訴したが、却下された。

裁判所は、バーマン手続きは、州上級裁判所での再訴訟に敗訴した当事者に対して費用を課すが、勝訴した当事者については規定がないと指摘。上級裁判所で未払い賃金を勝ち取った原告は、一般的に合理的な弁護士費用と訴訟費用を受け取る権利があるとされた。


雇用主への教訓

  • 和解契約書には、原告が「勝訴当事者」と解釈されないように慎重に文言を整え、弁護士費用については裁判官の裁量に任せず交渉で確定すべき。
  • 裁判所の判断が残るよう、重要な審理では必ず速記者を同席させること。
  • 原告が複数いる場合や訴因が複数ある場合には、費用の区別と配分が弁護士費用の最小化に重要。
  • 被告側が原告側の時間請求を過大と主張するには、自らの作業時間の証明が必要。
  • 原告側弁護士の報酬レートが経験・スキルと比較して不当である証拠が、費用削減に有効。
  • 乗数(Multiplier)は、他の仕事を断ったことや成功報酬型契約だけでなく、事件の新規性や難易度、訴訟全体での能力によっても左右される。
  • 民事訴訟法998条による和解案提示は、FEHA(差別関連)だけでなく、カリフォルニア労働法に基づく訴訟でも効果が限定的な場合がある。

▼出所

https://www.aalrr.com/Labor-Employment-Law-Blog/what-one-court-takes-away-in-attorneys-fees-other-courts-give-back?utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-_2lDUcDKEYoO8LG9W9moeje12Ukoh6ZNPfbjXrz61QsKyjoIRbnLLzdJxOl3Pc-AFwYMFevo4pbS1uioITgIGwKK6vwLObXxAHz3PqhbtIKhpSgGk&_hsmi=353034253&utm_content=353034253&utm_source=hs_email

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