アメリカ人事【在米日系企業向け】マッキンゼー調査に学ぶ、出社と柔軟な働き方の最適バランス

アメリカ人事【在米日系企業向け】マッキンゼー調査に学ぶ、出社と柔軟な働き方の最適バランス

~RTO率安定後も問われる「働き方戦略」~

2025年5月、マッキンゼー社は全米の労働者を対象とした「American Opportunity Survey」に基づく最新レポートを発表した。それによれば、パンデミックを契機に広がったリモートワークやハイブリッド勤務は、いまや一過性ではなく「定着した常識(entrenched norm)」であるという。

 

本記事では、この調査結果をふまえ、在米日系企業が人材確保と定着率向上のために今すぐ取り組むべき3つのアクションを考えてみよう。

 

アクション①:従業員の希望と働き方モデルのズレを「見える化」

マッキンゼーの調査では、労働者の過半数がリモート勤務を希望しており、企業側の希望と一致しているのは全体のわずか40%であることが示された。つまり、多くの企業では、従業員の希望と実際の働き方に乖離がある。

 

在米日系企業でも、「日本本社の意向」や「現地マネージャーの感覚」に基づいて出社を義務化しているケースが見られる。しかしその判断が、実は優秀な人材の流出やモチベーション低下を招いている可能性がある。まずは従業員アンケートや1on1面談を通じて、働き方に関する“温度差”を可視化することが考えられる。

 

アクション②:「全員出社」でも「全員リモート」でもない、役割別設計導入

報告書では、出社率が2022年の53%から2024年には58%に増加している一方、「オフィス出社はパンデミック前より平均30%減少」しているという。注目すべきは、フルリモートよりも「ハイブリッド勤務」が最も好まれているという点である。

 

全社的に「毎日出社」か「完全リモート」かの二者択一にするのではなく、業種・役割・業務特性に応じた柔軟な設計が必要である。たとえば、販売や製造現場は対面が必須だが、経理・人事・マーケティングの一部業務はハイブリッドで運用可能である。在米日系企業においても、日本的な「全員一律」を脱却し、ジョブ型運用を強化する転換期が到来している。

 

アクション③:「柔軟性」を制度化し、リテンション施策として活用

レポートでは、過去1年以内に離職した人のうち17%が「勤務形態の変更」を理由に退職したとされている。また、「高い給与」「キャリア機会」に次ぐ転職動機として、柔軟な働き方(例:子ども同伴勤務など)がトップ3入りしていることも注目に値する。

 

つまり、柔軟性はもはや「福利厚生」ではなく、「人材確保と定着のための戦略的武器」である。具体的には、次のような制度の導入・見直しが求められる:

 

フレックスタイム制や週4日勤務の試験導入

 

子育て・介護を考慮した時短勤務の選択肢

 

リモートワーク時の経費・設備支援制度

 

企業が柔軟性を制度として整備することで、「この会社なら長く働ける」と思わせる信頼を築くことができる。

 

まとめ

働き方に関する企業側の一方的な方針は、今やリスクである。マッキンゼーの調査が示すように、柔軟な働き方は「従業員満足」のための手段ではなく、「人材競争に勝ち抜くための戦略」である。

 

在米日系企業においては、「日本的価値観」と「米国的働き方」の狭間で揺れ動く現場が多い。だからこそ、データに基づき、自社に最適な「柔軟性」を戦略的に設計・制度化することが、これからの経営の鍵となるだろう。

https://www.hrdive.com/news/rto-rates-stabilize-flexibility-mckinsey/747815/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Newsletter%20Weekly%20Roundup:%20HR%20Dive:%20Talent%20Daily%2005-17-2025&utm_term=HR%20Dive:%20Talent%20Weekender

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