アメリカ人事|支払った関税は返金されるのか?米国連邦最高裁判決
アメリカ人事|支払った関税は返金されるのか?米国連邦最高裁判決

「IEEPAは関税権限を与えず」— HR・経営者が知るべき実務影響
2026年2月20日 | 米国人事・法務アップデート
- 判決の概要
2026年2月20日、米国連邦最高裁判所は、国際緊急経済権限法(IEEPA: International Emergency Economic Powers Act)を根拠として発動された包括的関税措置について、6対3の多数意見により重要な判断を示した。
最高裁は、IEEPAは大統領に関税を課す権限を付与していないと判断し、同法を根拠として導入された広範な関税措置は権限の範囲を超えるものとして無効であると結論付けた。
ここで重要なのは、本判決は「関税制度そのもの」を否定したものではないという点である。本件はあくまで、関税発動の法的根拠と権限分配に関する憲法問題である。
- 最高裁が判断した核心
本判決の法的ポイントは以下の三点に整理できる。
① IEEPAは関税賦課権限を含まない
IEEPAは国家安全保障上の緊急事態に対応するため、大統領に一定の経済的制裁権限を与える法律である。しかし最高裁は、同法の文言および立法趣旨を検討した結果、関税を課す権限まで含むとは解釈できないと明確に示した。
② 関税(実質的には課税)は議会の専権事項である
米国憲法第1条により、課税権限は原則として議会(Congress)に帰属する。広範な経済的影響を持つ関税を行政権のみで創設することは、権力分立原則に反すると判断された。
③ 行政権限の逸脱(Ultra Vires)
緊急権限を用いた包括的関税措置は、大統領に委任された権限の範囲を超える行為であり、行政権の逸脱に該当するとされた。
- 誤解されやすい重要ポイント
本判決については報道上の表現により誤解が生じやすいため、以下を明確にしておく必要がある。
■ 関税そのものが違法になったわけではない
今回無効とされたのは、IEEPAを根拠とした関税措置のみである。
したがって、以下の関税制度は本判決の直接の対象ではない。
- 通商拡大法232条(鉄鋼・アルミニウム等)
- 通商法301条(対中関税など)
- その他、議会が明示的に権限を委任した制度
企業は関税の有効性を判断する際、どの法律を根拠としているかを個別に確認する必要がある。
- 判決後に予想される実務影響
① 既徴収関税の返金請求リスク
IEEPAを根拠として徴収された関税について、企業側から返金請求(refund claims)が提起される可能性が高い。輸入企業においては、過去の関税支払履歴および会計処理の再確認が必要となる。
② 政府の関税政策の再構築
行政側はすでに、通商法122条など別の法的根拠を用いた関税措置の検討を示唆している。関税政策は終了したのではなく、法的基盤を変更して継続される可能性が高い。
③ HR・人材戦略への波及
関税政策の変動は以下に直接影響する。
- サプライチェーンコスト
- 製造拠点の再配置
- 海外赴任配置計画
- 採用市場および報酬水準
HR部門は貿易政策を「法務・財務の問題」と切り離すのではなく、事業戦略と連動した人員計画の見直しを行う必要がある。
- HR・経営者向けシンプル整理
| 項目 | 判断内容 |
| 関税制度そのもの | ❌ 違法ではない |
| IEEPAを根拠とした包括関税 | ✅ 無効(権限不存在) |
| 関税権限の所在 | 原則として議会(Congress) |
| 鉄鋼・自動車など分野別関税 | ✅ 判決対象外 |
| 政権の次の対応 | 別法に基づく新措置を検討中 |
- 今後の注目点(憲法的意義)
本判決は単なる貿易政策の判断にとどまらない。
本質は、
「大統領の緊急権限の限界」と「議会の立法権」の境界線を再確認した憲法判断である。
特に本件は、近年の行政権限を制約する判例理論である Major Questions Doctrine(重要問題の法理) の流れの中に位置づけられる。今後、環境規制、AI規制、労働政策など広範な行政分野へ波及する可能性がある。
- 免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではない。個別事案については、資格を有する弁護士へ相談されたい。
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