アメリカ人事 | トランプ政権のEEOC 「DEIが差別になるのはどんな時か？」
アメリカ人事 | トランプ政権のEEOC 「DEIが差別になるのはどんな時か？」
2025年3月19日、米国雇用機会均等委員会（EEOC）と米国司法省（DOJ）は、職場におけるダイバーシティ、公平性、インクルージョン（DEI）に関連する「違法な差別」についての2つの指針文書を公表しました。
アンドレア・ルーカス（EEOC）
EEOCは、DEIプログラムの普及が進んでいることを踏まえた上で、こうした取り組みの広範な導入が「雇用において人種、性別、その他の保護対象となる特性を用いることに対する長年の法的禁止を変えるものではない」と述べました。
技術的支援文書の1つである「職場でDEIに関連した差別を受けた場合の対処法」では、1964年公民権法第7編（Title VII）に言及し、DEIに関連した差別が「労働者の制限、隔離、分類」や、性別や人種に基づく嫌がらせや報復行為という形で現れる可能性があることを明らかにしています。
また、「人種、性別、その他の保護されている特性に基づいて、違法に割り当てやバランス調整を行う」ことに加えて、以下のような差別的扱いも違法であると記されています：
- 採用
- 解雇
- 昇進
- 降格
- 賃金
- 福利厚生
- 研修、フェローシップ、メンター／スポンサーシップ・プログラムからの排除
- 面接候補の選定（候補者リストへの掲載を含む）
雇用主はこれまで、採用、昇進、賃金といった人事判断にTitle VIIが適用されることを認識していましたが、ルーカス氏が挙げた「メンタリングやスポンサーシップ・プログラムからの排除」や「フェローシップからの排除」などの行為は、EEOCが今後特に注視する可能性を示唆しています。
さらに、この新しい文書においてEEOCは、従業員リソースグループ（ERG）についても、保護特性に基づいて会員を制限し、それが従業員の地位や雇用機会に影響を与える場合は、違法となる可能性があると指摘しています。
この共同技術支援文書の発表に際し、EEOC暫定議長のアンドレア・ルーカス氏は、「フェア・アドミッション学生訴訟におけるクラレンス・トーマス判事の補足意見を引用すると、『2つの差別は正義を生まない』」と述べました。
2つ目の技術支援文書「職場でのDEI関連差別について知っておくべきこと」にはQ&A形式のセクションも含まれています。
トランプ政権第2期に向けた動きのパターン
このDEI関連の共同ガイダンスが発表される2日前、EEOCはルーカス氏が20の法律事務所に対して、それぞれのダイバーシティ＆インクルージョン施策について質問する書簡を送ったことを公表しました。
これらのEEOCの行動は、これまでの第2期トランプ政権の優先事項と一致しています。ドナルド・トランプ前大統領は政権初日から「違法なDEI」を標的とし、民間部門のDEIプログラムを規制する大統領令を発出しています。この命令の合法性については、現在もメリーランド州や第4巡回区控訴裁判所などで判断が分かれています。
株主もまた、DEIに対する世論を変えようとする活動団体の標的になっており、「逆差別」訴訟が注目を集めています。
デュエイン・モリス法律事務所のジョナサン・シーゲル弁護士は最近、「逆差別」訴訟の増加傾向を踏まえ、企業はDEIプログラムの見直しをすべきだと示唆しました。
法律事務所の見解
Seyfarth Shaw法律事務所は、3月19日のブログ記事において、この技術支援文書は「違法なDEI動機による人種・性差別を根絶する」というルーカス氏のこれまでの方針を反映しており、「どのようなDEI施策がEEOCの監視対象になりやすいかを雇用主が判断するための指針となる内容が盛り込まれ始めている」と述べています。
CDF Labor Lawは同日の投稿で、「トランプ政権および現EEOCは、違法なDEIに関与しているとみなした企業に対し、積極的に法執行を行う方針であることは明らかだ」と述べました。
ただし、「裁判所がEEOCのガイドラインにどう対応するか、Title VIIをEEOCと同様に解釈するかどうかは、まだ不明である」としており、トランプ政権のDEIへのアプローチは「今後浮上する複雑な課題である」としています。
Ogletree Deakins法律事務所のブログでは、マネージング・シェアホルダーであるノニー・L・シヴァーズ氏が、「トランプ政権の大統領令に関する訴訟の最終的な結果はまだ見えないが、雇用主はEEOCと司法省の共同ガイダンスを確認し、EEOCの解釈や今後の執行活動の方向性を理解すべきだ」と述べています。
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